
~政治主導のバージョンアップを
先日、政治主導の司令塔となるべき「国家戦略局」構想を断念するという菅内閣の新しい方針が報道されました。わたしは、民主党の基本理念を後退させることにならないか、心配しています。
昨年夏の総選挙で初当選させていただいた一議員として、そのとき提示した「官僚丸投げの政治から政権党が責任をもつ政治家主導の政治へ」などの政権構想5原則と5策に盛り込まれた骨子は、旧政権のしくみを終わらせ、21世紀の政治の方向性を示したものとして多くのみなさんに期待いただいたものと確信しています。
私は、参院選の惨敗は、決して政治主導の基本理念が否定されたからではないと思います。むしろ、国民は力強い変革のための政治主導のバージョンアップを求めているのではないでしょうか。9ヶ月間にわたる鳩山政権運営のなかで最も指摘されたのは、内閣のガバナンスの問題、すなわち、首相と各閣僚、大臣と大臣、大臣と政務官、与党との調整など、政治主導のしくみが必ずしも徹底されていなかったことが問題とされました。だからこそ、内閣法を改正して、国家戦略局として予算策定や国家ビジョンを策定する権限をもてる組織へと変わることが求められていたはずです。
それでも、私が担当した地球温暖化対策基本法案のように、首相が高い目標を掲げ、国家戦略室や閣僚委員会があったからこそ、旧政権ではできなかった省庁横断する画期的な閣法が国会提出された成果もありました。残念ながら、衆院通過したものの通常国会で廃案になってしまいましたが、それゆえに、新たに国家戦略局としてバージョンアップした政治主導による地球温暖化対策の方針策定を期待していたところでもあります。
政治主導というのは、政治家による官僚外しではないのはもちろん、政治家が官僚の仕事をあたかも奪うかのように同じことを実行することではないと私は思います。各省の政務三役の政治手腕は国民から一定の評価を受けていると思いますが、現在の一部のやりかたは、ややもすると、政治家が「政治」を忘れ、数字と資料を詰め込んだ「政策」に没頭させられ、知らないうちに志ある政治家が官僚化してしまいかねない、いつか行き詰まってしまうことを危惧しています。
この数十年、日本の政治といえば、官僚が政策をつくり、法律を立案し、政治家はそれを追認するという繰り返しでした。官僚は何十兆何百兆円という予算と情報と人を武器にしてものを言います。それに対して、各政党独自あるいは系列の総合的なシンクタンクや政策提言組織は皆無に近いのが実態であり、個人の政治家がもてる政策スタッフはたった1名(ちなみに、日本は国会議員1人につき公設秘書3人に対し、米国は下院議員では平均14人、上院議員では40~50人)です。こうした現状を根底から変えなければ、「政治主導」は絵にかいた餅になってしまいます。
政治主導の新しい政治、「平成維新」を完成させようと決意するならば、本来、こうした現実もあわせて国民に誠実に説明すべきであると思います。舵を渡され、しかし、それを動かす燃料がなければ、日本丸が沈没してしまことになりかねません。
わたしたち民主党が挑戦する課題はまだまだ山積みです。国、経済、社会、地域、暮らしの改革が一気呵成するものではないことは多くのみなさんにご理解いただくも、不断なる変革に向けて忠実に努力を続けていくことが私の責務であり原点であることを忘れず、今後の活動にのぞみたいと思います。
~消費税増税について
今回の敗因は、菅総理による"消費税"発言が原因だという分析があります。わたしは、参院選が始まる2週間前のブログ(6月10日付)で、すでに、消費税に対する"乱暴"な論議への懸念を述べました。
しかし一方、今回の選挙で明暗を分けた一人区を見ると、民主党の候補者に苦い水を飲ませた相手候補は民主党以上に消費税を掲げた自民党です。この現象から、私は責任ある政権与党に対する厳しい視線を強く感じずにはいられません。責任与党は何を求められているか、この出来事に学ぶことがたくさんあるように思います。
消費税論議に、わたしは、三つの前提条件が必要であると思います。
一つは、完全透明な行政システムへ政治の責任でつくり変える。徹底したムダの削減はもちろん行政改革をすすめて、政府と国民とのあいだに信頼関係をつくること。
二つめは、社会保障のありかたと財政再建ロードマップをセットで国民に提示し、熟した議論を通して、国民のコンセンサスを得ること。
三つめは、安心して心豊かに暮らせるこれからの国家像をしっかり提示すること。単なる数字と手法の話や他国との比較ではなく、いま我が国が抱える閉塞感や将来的な不安を吹き飛ばすような新たな国家づくりの理念や哲学とともに税制改革を語ること。
菅内閣は、たとえば、特別委員会のひとつとして財政再建委員会を立ち上げてはどうか提言したいと思います。
消費税増税にむけた超党派による議論の場づくりを行うよりも、国会のなかで先進国一の借金大国である日本の国家財政の再建について与野党がきちんと議論を積み上げていくプロセスが必要ではないでしょうか。しかも、公開の形で行なわれることが、将来的に増税をお願いする場合にも、国民のみなさんに対する説明責任と信頼を確保できる一助になると考えています。
~政権交代ということ
参院選が終わって10日あまり。民主党にとってたいへん厳しい夏を迎えています。東京選挙区では、蓮舫大臣の圧倒的な勝利とともに小川敏夫議員3期目スタートを実現することができ、民主現職2名を当選させていただきました。しかし、全体として改選前10議席を減らす結果となり、衆参合わせて政権交代を完結できなかったことを、私はたいへん厳しく受け止めています。
昨年の総選挙の歴史的な意義を振りかえると、それは、国民ひとりひとりの力で政権を交代させるという新しい政治のはじまりでした。議会制民主主義というのは、二大政党制か複数政党制かではなく、重要なことは、政権交代ができる政治であること、政権の交代をくりかえすことによって民主主義に適う政治主導・国民主導の政治をめざすこと。日本はそれが可能な制度をもちながら、長いあいだ政権交代をしてこなかったために民主主義の活力と自浄能力を失ってしまいました。我が国が閉塞的な政治や社会に落ちてしまったのはこのことに大きな原因の一つがあるのは否めません。
交代した政権与党は、国民に約束した政策を実行しきちんと国民生活に還元していくことができるかどうか。その仕事のチャンスをいただき、できなければ交代する。政権交代によって時代とともにある国民全体の意識や利益を国政に反映させる。そのことをみなさんが望んだからこそ、昨年、新しい政治がはじまりました。
しかし、衆参合わせたチャンスを十分にいただく前に、今回の参院選で国民のみなさんが「ちょっと待った」をかけた、その真意をしっかり見極めなければなければなりません。
消費税発言の問題もさることながら、政権交代して為すべき歴史的難業への覚悟、変革に挑む姿勢、時代を切り開くチャレンジ精神、マニフェストで約束した政策着手のプロセスや成果の実態を取り上げながらそれらの決意をあらためて徹底して訴えることが求められていたのではないでしょうか。それこそが原点です。
昨年9月以来、事業仕分け、機密文書ふくめて行政情報管理の改革や公開、人のいのちを重視した予算への組み替え、開かれた政治への努力など、数々のとりくみに対して多くのみなさんが今までにない政治的関心をもっていただき、日本の政治が新たな方向に動きはじめたと少なからず感じてくださったと確信しています。
それはチャレンジャーとしての民主党政権が支持されたのであって、安心して丸ごと民主党に政権を任せていただけるまでには道のりが必要です。どこまで政権担当能力があるのか、どこまでマニフェストで約束したことを実現するのか、国民のみなさんの冷静にそして辛抱強く見守っていただいている率直な姿勢が今回の参院選の結果ではないでしょうか。今回議席を減らしたものの全国の得票総数では第一党の結果をいただいたことにも表れていると思います。
国民のみなさんが民主党による9ヵ月間の政権運営に対して厳しい評価を下したとともに、民主党が掲げた理念、行財政改革、約束した政策をしっかり実現せよという強い号令を発していただきました。そのメッセージを謙虚に受けとめ、実行に移さなければなりません。
8日夜、菅直人94代目内閣総理大臣のもとで新内閣が正式発足いたしました。
自民党出身でもない、旧社会党出身でもない、しかも世襲でない、いわば、戦後55年体制から真に脱却する総理が誕生し、市民が主人公の政治実現をめざして30年間戦い続けてきた方が日本のトップリーダーとなりました。私のNGO時代から、菅さんは、新しい社会を拓く大先輩として、さまざまなアドバイスをくださった政治家のお一人です。
東京三多摩エリアから初めての総理が誕生し、町田と多摩の地域にもたいへん馴染みの深い政治家が総理であることは頼もしく、喜ばしいことです。
しかし、鳩山内閣から引き継いださまざまな改革を前進させること、また、課題解決への道のりは決して容易ではありません。菅総理のもとで発足した新内閣の最初の仕事は、まず、政治に対する国民のみなさんの信頼を取り戻すことが大切なスタートラインです。
また、会見スピーチで示された、強い経済と財政と社会保障を一体的にすすめるというメッセージは、わたしたちの暮らしや職場に置きかえると、どんなふうに日常が変化し、生活が良くなっていくのか。持続可能な年金、医療のありかた、介護保険制度の再構築にむけて、これから、さらなる議論が必要です。
同時に、一部メディアで、急に「増税」の論議が一人歩きするかのような空気が心配です。
菅総理は、財務大臣のときに衆院予算委員会で、増大する社会保障費を賄う消費税増税について、「逆立ちしても鼻血が出ないほど、完全にムダをなくしたと言えるまで来たとき、必要であれば措置をとる」と述べています。
私は、決算行政監視委員として特別会計の「検証」チームのメンバーでもありますが、381兆円という巨大予算のなかにはまだまだ天下りや巨額なムダが隠されています。また、事業仕分けの結果も、今後、「廃止」と判定されたものは廃止されるのかどうか、「縮減」や「XX億円国庫へ返還」と評価を受けたものはその通り実行されるのか、注目しなければなりません。
国民の税金は行政サービスをもって国民のみなさんにお返しをする。その透明なプロセスと着実な実行をもって、それから、国民のみなさんにきちんと必要性を説明をし、十分な議論をつくす。そのうえで、皆さんにおはかりをするのが増税をお願いする場合の税金のありかたではないでしょうか。
【プレスリリース】
鳩山由紀夫総理の辞任表明を受けて
鳩山総理は、一国のリーダーとして、新しい国づくりを進める政治改革の道半ばでの退陣に無念を感じておられることと思いますが、国家の将来を見据えた、たいへん重い苦渋の決断をされたと受け止めています。
昨年夏の総選挙で国民の皆さんの熱い期待と大きな責任をいただいた新人議員として心から残念でありますが、与党議員の一員として鳩山総理が成し遂げようとした改革をさらに進めなければならない、その決意と覚悟を新たにしております。
逆境こそ力なり。政権交代の原点に改めて立ち返り、国民の皆さんの信頼を取り戻すため、国民の生活を守るために、全力で取り組んでまいります。
2010年6月2日
衆議院議員 櫛 渕 万 里